民法法律行為~条件・期限の解説

みなさん、こんにちは!

今日は、条件・期限の解説をします。

 

 

条件が成就した場合の効果

  1. 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
  2. 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。
  3. 当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。
民法127条

解説

①停止条件

法律効果の実現が将来、発生するか否かが分からない事実に関係する場合

例)合格したら車を買う

②解除条件

法律効果の消滅が将来、発生するか否かが分からない事実に関係する場合

例)土日にゲームをしたら、もうゲームを買わない

条件を付けられない行為

①身分行為

婚姻、養子縁組、認知、相続の承認・放棄など

②単独行為

相殺、解除、取消、追認、買戻し、選択債権の選択等

このように、条件を付けられない行為を設けた理由としては、条件を付けることでその法律行為が実現するか否かというように、相手方を不安定な状態においてしまうため、上記の法律行為に限って条件を付けることができません。

※相手方の承諾があったり相手方を害しない場合には、上記の条件を付けられない行為も認められます。

条件の成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止

条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。『民法128条

解説

条件付き法律行為の当事者は、条件が成立するか確定しない間、条件が成就した場合にある相手方の利益を害することができません。

①例えば、合格したら自分の時計を新品の時計をあげるという、合格という停止条件付きの契約をした場合には、合格するまで当事者はその目的物を壊すことができません。

②また、停止条件付きの売買契約でも、売主は条件が成立しない間はその目的物を壊すなどすることはできません。

これらは、①の場合なら合格したら時計をもらえる、②なら条件成就で売買契約が成立するという期待が当事者にはあり、それを保護するためにこの規定があるとされます。

利益を侵害した場合

利益を侵害した場合には通説の中で損害賠償責任を負うとする説が有力とされ、また、利益侵害の具体的な効果が条件成就後に起こるという理由から、条件成就の前に損害賠償を請求することは認められないとされます。

 

 

条件の成否未定の間における権利の処分等

条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。『民法129条

解説

条件が成否するかどうかわからない間、当事者の権利義務は処分・相続・保存したり、担保を提供してもらうことも可能であるとされます。

条件の成就の妨害

  1. 条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。
  2. 条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする。
  3. 前二項に規定する場合において、当事者が条件が成就したこと又は成就しなかったことを知らない間は、第128条及び第129条の規定を準用する。
民法131条

解説

1項について

条件が法律行為の時に成就していたとき

・条件が停止条件ならその法律行為は無条件 ・条件が解除条件ならその法律行為は無効

例えば、合格(条件)したら時計を買ってもらうという契約で契約前に合格していた場合には、それが停止条件ならその契約は無条件に成立、つまり法律行為が有効になります。

2項について

条件が法律行為の前に成就しないことが確定していとき

・条件が停止条件ならその法律行為は無効 ・条件が解除条件ならその法律行為は無条件

上記の停止条件の例でいえば、合格できなかった(条件が成就しなかった)ため、時計を買ってもらうという契約(法律行為)は無効となります。

 

 

不法行為

不法な条件を付した法律行為は、無効とする。不法な行為をしないことを条件とするものも、同様とする。『民法132条

解説

不法な行為というのは例えば、殺人・放火など(不法な条件)をしたら金銭を与えるというような法律行為をいい、その法律行為はすべてが無効となります。また、その不法行為をしないことを条件とするのも禁止されています。

不能条件

  1. 不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする。
  2. 不能の解除条件を付した法律行為は、無条件とする。
民法133条

解説

不能な停止条件を付した法律行為は無効、不能な解除条件を付した法律行為は無条件とされています。

世界一お金を稼いだら(停止条件)この会社を譲るなどの場合には、条件が一般的に見て不能条件といえますから、この法律行為は無効ということができます。

随意条件

停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする。『民法134条

解説

債務者の意思だけで有効・無効が決まってしまう停止条件付法律行為は無効となります。例えば、Aが合格したらB(債務者)は時計を譲る場合にBの気まぐれであげる・あげないというふうに、債務者の意思だけに依存する場合は無効となります。

 

 

期限の到来の効果

法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が到来するまで、これを請求することができない。 法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する。 『民法135条

解説

①法律行為に始期を規定したときは、その期限が到来するまで履行の請求をすることができません。

そのため、始期が設けられると債権者が履行請求できないだけでなく、債務者はその履行をする必要はありません。

②法律行為に終期を規定したときは、その法律行為の効力は期限到来で消滅します。

そのため、終期が設けられると債務者はそれ以降、法律行為を行う必要はありませんし、逆に債権者はその法律行為の履行請求をできなくなります。

期限とは、確定期限という将来その事実が起こることが確実な場合をいい、不確定期限は将来その事実がいつ起こるのか不確実な場合をいいます。

期限の利益及びその放棄

  1. 期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
  2. 期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。
民法136条

解説

1項

期限の利益というのは債務者のために利益と推定されており、期限が到来するまで債務の履行を負わない利益をいいます。

例えば、金銭貸借の場合を考えると債務者は期限が到来するまで金銭を返済しない利益があります。しかし、ここには返済期限までの利息を得られる債権者の利益も存在しています。

2項

そのため、2項では期限の利益を放棄できるとしながらも、期限の利益を放棄して相手方の利益を害することはできないとしています。

債務の利益を放棄では、その法律行為の「当事者の一方のため」だけにあるとき、債務者にだけあるとすれば債務者は期限到来までの利息を付けて返済すれば足り、期限到来時までの利息を支払う必要はないとされます(大判大7年3月20日)『伊藤真 入門六法 民法Ⅰ[総則・物権]第3版』

期限の利益の喪失

次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。 一 債務者が破産手続きの開始を受けたとき 二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき 三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。 『民法137条

解説

債務者が上記のような状況にあった場合に、債務者は期限の利益を主張することができません。これは、期限が債務者と債権者の「信頼関係」に基づいているとされるため、その信頼を損なうような行為があれば期限の利益が喪失するとされます。

期限の利益が喪失することで、債務者は履行の義務を負いますが債権者から履行請求があるまでは、履行遅滞になることはありません。

 

法律行為についてはこちらも参考にしてみてください。

民法法律行為~追認の方法と追認の要件

民法時効制度~取得時効とは何か

民法総則~消滅時効とは何か