【相続】―相続する前に知っておきたい相続の基礎知識―第一回

相続というと「たくさんの資産を遺族同士でもめる」と言うイメージが浮かぶ方も多いと思いますが、相続というのはお金持ちではない資産が少ない人、資産がマイナスの人にも関係することです。

相続人になる場合がほとんどかと思いますが、遺産を相続する人が正しい知識を持っていれば、適切にトラブルに対処してもらえる財産をもらうことができるでしょう。

 

この記事では、何回かに分けて内容を追加しながら相続についてを見ていきたいと思います。

 

そもそも相続とは?

「相続」というのは、誰かの財産を次の世代に引き継がせることを言います。簡単に言ってしまえば、亡くなった人の財産を配偶者であったりその家族が引き継ぐということです。

日本では憲法29条1項で

財産権は、これを侵してはならない。

と規定されて私有財産が認められていますが、当然、その財産の所有者が亡くなったら誰かが引き継ぐ必要がありますし、死亡した人に借金があってそれが引き継がれないとしたら債権者にとっては酷なことです。

そのため、財産をプラスの観点から引き継ぐというために相続があると言えますし、債権者保護の観点から相続があるともいえるのです。

相続がうまくいかないと・・・

相続をする場合に相続する割合が決まっていないと遺産分割協議で決めることになりますが、その中で相続人同士のトラブルが起きる可能性もあります

ただ、争いが過激になると相続欠格になる(これは後ほど)場合もあるので、相続争いでもめすぎて相続人としての権利を失うことは避けたいところです。

日本では高齢化の進展で相続は避けては通れない道ですから、これから紹介する知識を身に付けて正しい相続ができるようにしましょう。

相続の対象になるもの

相続の対象となるものは「被相続人が死亡時に保有していたもの」となっています。それは例えば、現預金や不動産のように形があるもの・プラスの財産だけではありません。

保証債務を含めた債務や土地の権利など、目に見えないものやマイナスの財産も相続することになります。相続と聞くとプラスの財産だけかと思いがちですが、実はマイナスの財産も相続の対象となっているんです

 

 

一方、民法896条では

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

このように規定されています。この条文では、被相続人の資格や年金受給権などその人だけに属する権利は相続の対象にならないことが規定されています。資格まで引き継ぐわけにはいきませんよね。

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年金受給権が相続の対象とならないことは、朝日訴訟で示されているので法律学習者は目を通してみてください。

相続できる人

相続人の範囲

民法900条では以下の通りに相続人が定められています。

  • 必ず相続人:配偶者:2分の1
  • 第一順位:子(または代襲相続人(孫)):2分の1⇒養子も含まれる
  • 第ニ順位:父母(両親などの直系卑属):3分の1
  • 第三順位:兄弟姉妹(または姪・甥(代襲相続人)):4分の1

ここで示されるように、配偶者は必ず相続人となり、第一順位がいなければ第二、第二がいなければ第三というように、相続人が変わっていきます。

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民法900条4項では、子・直系尊属・兄弟姉妹がいるときに相続分は等しいが、非嫡出子は嫡出子である子の2分の1とする規定がありました。ただ、それは違憲であるとの判決を受けて現在では嫡出子と非嫡出子の相続分は等しくなっています

 

 

法定相続人でも相続できない?

法定相続人であるとしても、被相続人を殺害・虐待などした場合には、相続人から除外されて遺産を相続できないことがあるので注意しましょう。これは民法891条に規定されています。

相続欠格

相続人が民法891条の1項から5項で規定されていることを行った場合には、相続人としての資格が認められなくなります。これが「相続欠格」となります。

  1. 被相続人・他の相続人を殺害・殺害しようとして有罪判決を受けた
  2. 被相続人が殺害されたことを知ってそれを告発又は告訴しようとしなかった
  3. 詐欺や強迫で被相続人が遺言を書く・撤回する・取消した・排除した
  4. 詐欺や強迫で被相続人に遺言を書かせる・撤回させる・取り消させた・排除させた
  5. 被相続の遺言書を偽造・破棄・変更した

相続欠格になれば、相続人となれないだけでなく遺言で相続もできないので注意が必要です。

相続廃除

相続欠格ほどではありませんが、相続人が被相続人を虐待または侮辱した場合、又は推定相続人に著しい非行があれば、家庭裁判所に申し立ててその相続人を相続人として認めないようにすることができます。これが相続廃除となります。

ただ、相続廃除となっても相続欠格とは違って、遺言書によって遺言を受け取ることは可能になります。いずれにしても、相続人としての地位を失わないように注意したいですね。