司法試験憲法短答試験過去問解説H29第3問 【国籍法違憲判決】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験憲法過去問第3問を解説します。

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〔第3問〕(配点:3)
日本国民である父親から出生後に認知された子の日本国籍の取得をめぐる国籍法違憲判決(最高裁判所平成20年6月4日大法廷判決,民集62巻6号1367頁)に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからウの順に[№5]から[№7]) 

ア.前記判決は,日本国民を血統上の親として出生しながら,日本国籍を生来的に取得できなかった子について,日本国籍を生来的に取得した子よりも日本国籍の取得の要件を加重すべきであるとする立法目的には,法律婚を尊重する観点から合理的な根拠があるとした。[№5]

イ.前記判決は,日本国民である父親から出生後に認知された子について,父母の婚姻が日本国籍の取得の要件とされている点をして,立法目的との合理的関連性の認められる範囲を著しく超える手段を採用したものであるとした。[№6]

ウ.前記判決は,婚姻関係にない父母から出生した子について将来にわたって不合理な偏見を生じさせるおそれがあることなどを指摘し,父母の婚姻という事柄をもって日本国籍の取得の要件に区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては慎重に検討することが必要であるとした。[№7]

http://www.moj.go.jp/content/001224568.pdf』問題

http://www.moj.go.jp/content/001225947.pdf』解答

まず、国籍法違憲判決がどのような判決なのかを見ていきましょう。 

国籍法違憲判決

判示にある通り、争点は2つ。

一つ目  

日本国民である父と日本国民でない母との間に生まれた子供を父が認知し、その後、婚姻によって嫡出子たる身分を取得した(準正のあった)時に限って、日本国籍の取得を認めている点において、国籍取得に区別を生じさせていることと憲法14条1項法の下の平等との関係。

二つ目

婚姻によって嫡出子の身分を取得するという準正要件を除いた他の要件が満たされれば、国籍法3条1項によって嫡出子の身分を取得し得るか。

判示としては、準正要件が満たされなければ嫡出子たる身分を取得できないか、準正部部を満たさなくても嫡出子たる身分を取得できるかが争点となっています。

判決要旨

上記2点の争点について、判決要旨では、婚姻によって嫡出子たる身分を取得するという準正条件は憲法14条1項に違反している、また、準正要件がなくても他の要件が満たされていれば嫡出子たる身分を取得できるとしています。

上記をもとにしながら、各問題の判示の部分を要約しながら問題の正誤を検討していきます。

 

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アについて

国籍法が設けられた当時は、認知に加えて婚姻という法律上の関係(準正要件)を設けていることは、日本との密接な関係を持つことができるのに加え当時の諸外国でもよく見られる事例でした。

そのため、その当時において国籍法が憲法違反ではないという考え方を示しています。

ただ、近年の諸外国が非嫡出子に対しての差別を解消する傾向にあり、婚姻によって嫡出子たる身分を取得するのは現在の家族制度に合致するものではなく、準正要件に合理的関連性を見出すことが難しくなっているとしました。

この立場から、現在では国籍法の準正要件にある「法律婚」は合理的な要件とは言うことができないことが分かります。よって、アの答えは「2」となります。 

イについて

イの問題は、判決を加えると、日本国民である父に出生前に認知された子と出生後に認知された子との間に、国籍取得に差別を設けていることが合理的であるかどうかが争点となります。

判決では、出生前に認知された子と出生後に認知された子の家族的な結びつきには特別な差異があるわけではなく、さらに、出生後に日本国民の母から認知された子は嫡出子たる身分を取得できるのに、日本国民である父から認知された子に国籍取得が認められない点は、両性の本質的平等に基づいていないと判示しています。

脱線してしまいましたが、出生後の父の認知だけでは嫡出子たる身分を取得できないという国籍法の規定は、立法目的との間に合理的関連性を見出すことができないとしています。よって、イの答えは「1」となります。

ウについて

ウの問題についてですが、まず、下記の判決を見てみましょう。

父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは,子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄である。したがって,このような事柄をもって日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては,慎重に検討することが必要

 『http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/416/036416_hanrei.pdf

 一見、上記ウの問題は正解のような気もしますが、「子供の不利益」ではなく、「こどもが将来的に変更できない」ことを参考にして検討するべきとしているため、この部分が間違っていると思われます。

よって、ウの答えは「2」となりますが、ウについては参考程度にみていただければと思います。

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